中国株暴落の深刻さ

 

 

                                                            宋 文洲

上海総合指数は約3週間で30%以上暴落しました。何人もの経営者の友人が

電話をかけてきて私に意見を求めましたが、私は彼らに4カ月前に書いた文章を

送りました。まずその文章の一部を引用します。

 

「2014年半ばから急騰してきた中国の株価指数『上海総合指数』の動きが

気になって仕方ない。いつ株を売り買いしようか迷っているわけではないよ。

この半年間の株価の上がり方が不自然過ぎて、気持ち悪いからだ。

 

そんな折、人民日報に『中国の株価はまだ上がりそう』という趣旨の記事が

増えてきた。それまでは半信半疑だったが、これらの記事を見て確信したね。

中国政府が意図的に株価を上げようとしているんだ、と。今後半年程度の

上海総合指数の動きによって、中国経済の先行きの明暗がある程度みえてくる。

中国で事業をしている日本企業の人たちも注目しておいた方がいい。」

(「上海株は危険な官製相場 このまま一服してほしい」日経ビジネス 2015/03/16号

http://r31.smp.ne.jp/u/No/1148651/e3Bbf0g0FaDD_179874/148651_150710001.html

 

一年前までは、中国株は確かに安かったのです。上海指数はずっと2000点付近

を徘徊し中国銀行や中国石油などの優良株のPERは10倍にも達しておらず、

配当も5%前後ありました。

 

中国経済が長い間成長してきたのは経済を政治から分離し、市場の規律を尊重

してきたからです。株式市場は資金をもって経済の未来に投票する場所でした。

昨年の株式市場の低迷脱出は世界経済や習近平の腐敗撲滅に希望を感じたから

であって、決して政府が上げたものではありませんでした。

 

ところが、誰の提案かは知りませんが、今年に入ってから明らかに中国政府が

回復傾向にある株式市場を利用しようとし始めました。金融当局の政策も発信も

目立って株式市場を誘導し始めました。あの経済音痴の人民日報までも。

証券会社の店頭にいくと、過去数年間、閑古鳥が鳴いていた店頭でも、口座を

開く人でいっぱいでした。バブル特徴のすべてが揃いました。

 

中国株は過去にも暴落を経験してきましたが、今回の暴落にはこれまでに

なかった深刻さがあります。

 

1. 高度成長が終わり、中国経済は構造改革に直面している

2. 初のレバレッジ相場が崩壊し、金融当局が融資残高を把握していない

3. 政府が相場の上昇と下落に明確に関与した

 

中国のテレビに出演した際、多くの中国の経済や金融の専門家と知り合いました。

我々内部の交流サイトでは、ここ数日激しい口喧嘩が起きています。政府が

金融市場を管理すべきと主張する「管理派」と、政府の関与を最低限に留める

べきと主張する「原理派」との喧嘩です。今週月曜日には政府が相場の下落を

止めるべきだと勢いよく主張していた「管理派」は段々弱くなりました。

政府の努力が無駄であることを相場が証明したからです。

 

たぶん、習近平や李克強の周辺も同じことが起きています。指導部が謙虚に

教訓から学べば遅すぎることはありません。短期的に苦しいかも知れませんが、

市場や経済原理の洗礼を受けてこそ中国経済に将来があるのです。無理やり

成長の数字を維持し、権力を経済原理に押し付けた場合、中国の経済や社会が

大変な局面を迎えます。

 

 

(終わり)