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宋 文洲
三年前から社長を続けているのであれば現在の経営数字に責任を取るべきです。
これが実業界の常識ですが、どうも安倍総理には通用しないようです。
日本のマスコミも遠慮深いから、不遜ながら私が総括してみます。
1.嫌いな社員がいる
どんな社長にも嫌いな社員が結構います。人間ですから社員の中に人間として
好きな社員と嫌いな社員がいるのは当然です。しかし、良い社長はそれを
上手く隠せる上、人事評価に好き嫌いを絶対反映させません。好きな社員を
抜擢し、重要なポストにおく社長はかなりいますが、長く続くと必ず組織が
衰退していきます。
私の友人に正直者の社長がいて部下やお客さんの前で「人事は社長の好みで
行ってよい」と公言しています。好みで人事を行いたい気持ちはとても
分かりますが、敢えて明言すること自体、社員達の仕事に使うエネルギーを
奪うだけですから何のメリットもありません。嫌な社員でも仕事さえして
くれれば、何の不利益も被らせないという公正さと嫌な社員を褒める演技力は
良い社長の基本です。業績こそ、社長の好みです。
2.迷いが多い
社長の最大の役割は組織の方向性を定めることです。どの分野にリソースを
シフトさせるか、どの事業を撤退させるか、どのような人を抜擢させるかなど、
毎日、心中で悩んでいます。しかし、悩んでも悩みを社員に見せる訳にも
いきません。社員は社長の明快な方針と言葉を聞いて行動するものです。
したがって下駄を投げて決めたことでも一旦決めたら恰も100%正しいような
振りをしなければなりません。しかし、気持ちの中で常に「これで本当に大丈夫か」
という自問を残す必要があります。
良い社長は「まずい」と分かった時点で態度を180度変え、社員が納得できる
方法で変更の理由を釈明しますが、悪い社長はそれを総括せず曖昧なままに
しておきます。最悪の社長は自分の正しさを証明するために最後の最後まで
やり通します。根性や精神力ではなく、業績こそ社長のプライドです。
3.辞めたくなる時がよくある
社員は会社を辞めたりしますが、社長も会社を辞めたいと思う時がよくあります。
もちろん上手く行っている時は誰も辞めることを考えませんが、上手く行かない
時は必ずあります。株主との関係がうまく行っていない時、役員や社員との
関係がうまく行かない時、不祥事が起きた時、会社が経営危機に瀕している時
など辞めたくなる時は結構あります。
逃げずに頑張っている理由はいくつかあります。まず社長になれるような人は
逃げるのが嫌なタイプが多いです。辞めるとしても名誉のある辞め方をしたい
気持ちが強いのですが、この名誉ある撤退に拘るあまり、辞めたくても
なかなか辞められない社長もいます。まあ、一種の株を売り損なった状況です。
次によくあるのは辞めたいと思いながらも、他にもっと良い職業やポストが
見付からないため、「俺にはこれしかない」と気付き、頑張っている人達です。
正直、就職も結婚も、人間はだいたい贅沢を言えないから現状に納得するケースが
ほとんどですから、このような社長を非難する資格は誰にもありません。
一番良くない社長は辞めたいと一度も思わない人です。このような社長は
本当にいるかどうかは分かりませんが、いるとすれば最悪です。
社長の最後の大仕事は後任作りです。後任を見付けられないと苦悩する社長は
多いと思いますが、良い社長は見付けるものではなく、見付かるものです。
社長を辞めた後ももう少し会社に居座りたいと思う社長は所詮本物の後任を
見付けることができません。なぜならば本物の社長は隠れ上司を必要として
いないからです。
(終わり)