なぜ米国人が中国を好きになったか

 

 

                                                            宋 文洲

先週、民間調査の権威である米国ギャラップ社が日本人に馴染まない調査結果を
発表しました。それによると現在の米国では中国を好きな米国人が50%に達して
30年来初めて中国を嫌いな米国人を超えたそうです。
China's US Image the Most Positive in Three Decades
http://r31.smp.ne.jp/u/No/3404132/h5CgfdIjFwaD_205689/404132_170306001.html


調査の詳細をみると1989年の天安門事件による一時的な激しいアップダウンを
除けば、米国人の中国への認識が少しずつですが、確実にポジティブになって
きました。好きが嫌いより多くなったのは歴史的です。


過去の30年間、中国政府と米国政府との間のトラブル時には危機と言えるような
出来事が絶えませんでした。米国による中国大使館への誤爆、米中台湾海峡危機、
米中空軍機の接触事件など枚挙に暇がありません。総合国力において中国が
米国を超えることが確実視される中、影響力を争うライバルとして中国への
警戒心も強めているにも関わらず、なぜ今米国人で中国を好きになる人が
多いのでしょうか。


私は一番の理由は米国人と中国人による前代未聞の民間交流にあると思います。
私個人の事例でいえば、4人の子供が全員米国に留学しています。学校の行事や
子供同士の遊びを通じて親同士や学校関係者や一般住民をとても身近に感じる
ようになりました。私が感じていることは向こうも感じているでしょう。


「訪日中国人が多い」と日本人は感じていると思いますが、150万人の訪日中国
観光客は1億人の海外旅行者全体の1.5%に過ぎません。彼らの多くは米国、英国、
カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの英語圏に行っています。
特に投資、留学と移民の場所としてこれらの国は中国人の人気を集めています。


次に中国は30年間をかけて米国の最大の貿易相手国になりました。トランプが
貿易赤字問題を中国とディールしたいと言っていますが、貿易のディールの
一つ一つは国家ではなく民間人の厳密な損得勘定によって決定されています。
米国人がメリットを感じない、米国人の役に立たない米中貿易は存在しないのです。
米中貿易は政治と関係なく両国民の距離を縮めたと思います。


それから多くの日本人に理解できないと思いますが、米国人は素直に中国の
社会進歩を認めているのです。1億人の海外旅行者の殆ど全員が自分の意思で
中国に帰ることは何よりも中国の進歩を示しています。現在毎年の50万人の
留学生が海外に行くのですが、ほぼ同数の留学生が中国に帰ってきます。
中国人の殆どは自国の社会システムの欠点を認識しながらも、自らの意思で
盛んに他国に移住したり、帰国したりすることは何よりもの進歩です。


先月、上海である旧知の日本人女性実業家に会いました。彼女は長い間上海に
住んできましたが、今ほど日本人観光客が訪れない時期はなかったというのです。
そのため、彼女が長年やってきた日本人向けの土産店を閉店せざるを得なく
なりました。海外に行かず中国語や英語のニュースも読まず、依然として紙の
新聞と地上波テレビによる日本語情報に頼る日本人は文字通りのオタクになって
しまうのです。


井の中の蛙の新聞紙と地上波が好んで報道する中国のマイナスニュースに
接すれば日本人は中国の本当の姿を知る訳がないのです。幼い園児たちに
「安倍総理ガンバレ」や「安保が良かったです」を宣誓させたり体罰を
行ったりする森友学園をみて、一部の日本人は「まるで中国」と言うのですが、
これこそ中国の現状を知らなすぎるのです。


文革時代には似たようなことは確かにありましたが、ここ30年間の間には、
このようなことは中国のどこの幼稚園にもあり得ないのです。まずそんな幼稚園に
子供を入れる親はいません。次に文革で痛い目に遭った中国のリーダー達も
そんな幼稚園に心酔する訳がありません。イメージが悪くなるだけです。
だいいち、幼児に体罰を与える幼稚園なんて、親達の殴り込みに遭いますよ。


日本社会の自信喪失や閉鎖化とは逆に、中国は大量な一般市民が日本を訪れる
ことになりました。戻った彼らは殆ど全員が日本のことを褒めています。
これに伴って中国人の日本への好感度がどんどん上がっています。日本人の
妻を持ち、日本との縁が深い自分としてとても誇りに思うのですが、同時に
「良いものは良い」「人の良い所を学ぶ」という同胞の素直さに
賞賛を送りたいと思います。


今日のメルマガも日本批判と捉える方が多いかもしれませんが、
「現実を知ってこそ正しい判断ができる」ことを申し上げたかったのです。
日本人の皆さんがお手本にしている米国社会の中国認識が参考になれば
幸いに思います。

 

P.S.

そういえば宋メールがまだ続いているかと思う方もいるでしょうが
簡単に現状を報告します。(時間のない方はここをパスしてくださいね)

私は創業者としてソフトブレーンの現在の経営を高く評価しています。
昨年の業績も大変よかったのですし、先週2月28日に発表した中期事業計画策定の
方針もこれらの業績は長期的成長過程の一部であることを示しています。
創業者としても、経済評論家としても、現在の経営陣が最も企業価値を上げる
よい体制だと確信しています。

敵対買収側はどんな目的で経営支配しようとしているかは時間とともに徐々に
明らかになると思いますが、悪質な乗っ取りにさらされている現在、
私が持っている知識と資力を使って現在の経営陣をサポートする予定です。

昨年、宋メールの読者(経営者)から「乗っ取りの結果と関係なく
勉強のためにそれを総括してほしい」との要望をいただきましたが、
いつか必ず詳細をご報告させていただきます。
敵対的買収史上の珍しい事例になりますよ。



(終わり)