製薬・医療機器

日本光電  導入事例

  

上海光电医用电子仪器有限公司(日本光電) 様

  

 

事業拡大で営業管理が複雑化情報共有でサービス向上を図る

 


医療用電子機器メーカーの日本光電工業の現地法人、尼虹光電貿易(上海)有限公司が、積極的な拠点展開とミドル、ローエンド市場での販路拡大を図っている。製品数と販売先が急増し、営業管理が複雑化する中、社内の情報共有ツールとして導入したのが、軟脳軟件(北京)有限公司(ソフトブレーンチャイナ)の営業支援システム「eセールスマネージャー(eSM)」だった。日本光電工業執行役員で中国統括本部長の吉竹康博氏に、同社の営業戦略などを聞いた。

 

内陸、中小病院へ浸透を図る

 

尼虹光電貿易(上海)は現在、心電計、生体情報モニター、心臓除細動器、脳波計、血球計数器、患者データマネジメントシステムなどを中国で販売しており、中でも心電計は市場シェア30%を占めている。成熟した日本市場で競合するのは3、4社に過ぎないが、世界中のメーカーが集まる中国市場ではそれが30〜50社にも及ぶ。「まさにワールドカップのような状態で、世界の強豪が凌ぎを削っている」(吉竹氏)という。

 

08年の設立当初は製品の認可獲得に集中してきたが、昨年から一気呵成な拠点拡大に動いている。昨年は瀋陽、西安、成都と一挙に3支店を開設、今年も市場拡大が見込める地域への拠点設立を予定している。沿岸部から一足飛びに西部へと向かった形だが、これは政府主導の医療インフラ整備により、内陸部、特に農村部での市場拡大を見込んでいるためだ。

 

同社はミドルからローエンドの製品を現地生産しているが、ハイエンド製品は日本から輸入しており、その売り上げが全体の7割弱に達している。ただ、市場のボリュームは中国系メーカーが割拠するミドルからローエンドの方が圧倒的に大きいことから、同社では二級以下の中小病院への浸透を急いでいる。

 

三級病院への営業では通常、医師などへの製品デモといった〝現代的な〞手法をとるが、二級以下の病院では地方政府が入札で安価な製品を大量購入し、各病院に配布するケースが多く、人脈を生かした〝古典的な〞マーケティングが重要になる。もっとも、中小病院の間にも独自に高品質の医療機器を調達しようとする動きがあり、同社の拡販に追い風となっているという。

 

日本並の商談進捗管理を目指す

 

同社がこうした積極的な営業展開に合わせて導入したのがeSMだ。事業拡大により「製品数も販売先も急増し、営業ポートフォリオの管理が難しくなってきた」(吉竹氏)ことから導入を決めた。加えて、市場拡大に伴ってアフターサービスの質がより重要視される中、サービスレベルの向上には顧客データの蓄積が不可欠だった。そこで、昨年10月末にまず、サービス部門でeSMを導入。その後、営業部門でも活用し始めた。

 

eSMによる情報共有が必要とされる背景には、中国独特の業界構造もある。代理店経由の販売が全体の95%を占めている点だ。代理店経由で得る医療機関の情報にはどうしてもフィルターがかかっているため、同社営業が医療機関との交渉に直接参加し、確度の高い情報を吸い上げる必要がある。

 

もちろん、ただ商談に参加するだけでは十分ではない。同社は医療機関や代理を対象としたセミナーを頻繁に開催し、工学や臨床医学の専門知識を持つプロダクトマネージャーが海外の最新臨床テクニックを伝えることで、製品の付加価値を高めている。

 

同社は現在、営業の日報や活動報告にeSMを活用している。上海と北京の営業マネージャーがデータの確認を行なっており、日本並の細かな商談進捗管理を目指している。一方、営業の業績評価にもeSMを活用。各販売領域における目標達成率という定量評価はもちろん、これまで食い込むことが困難だった医療機関や代理店を開拓できたなどの定性評価を加え、バランスの取れた評価が可能になっているという。

 

今後の課題は部門間、拠点間の情報一元化だ。例えば、サービス部門の担当者がメンテナンスで顧客を訪れた際に得た情報をeSMに入力することで、営業担当者はよりタイムリーな営業活動が可能となる。将来的にはどの顧客にどの製品をいつ、どの代理店を経由して販売したのかが一目瞭然となるようにしたいという。

 

   

 

医療データの電子化に対応へ

 

中国の医療機器市場は今後5年、年率15%程度で拡大していく見込みだ。その一方で、市場の寡占化が進み、「各製品で市場シェア3位に入っていなければ生き残れなくなる」(吉竹氏)と見られる。

 

同社が今後、事業の中核を担うと考えているのが患者データマネジメントシステムだ。「欧米では医療データの電子化がかなり進んでいるが、中国でも今後はシステムとの接続をサポートしていない機器単品の販売が難しくなるだろう」(吉竹氏)。そこで、同社では開発会社のメディネット光電医療軟件(上海)有限公司でSEを増員し、システム開発を強化。医療IT化の流れに乗りたい考えだ。

 

吉竹氏が今後の拡販に期待を寄せているのが、昨年中国で発売した「自動体外式除細動器(AED)」。突然の心停止に陥った患者への救命措置に使われる装置で、日本ではオフィスビルや商業施設、地下鉄駅構内などに設置が進んでいる。AEDは、人命に直結するため万が一の故障も許されない〝クリティカルデバイス〞であり、他の製品に比べて一層慎重な管理が必要となる。吉竹氏は「メンテ履歴の管理にeSMを活用していきたい」と話している。

 

 

Whenever BizCHINA 2012年3月号掲載
ご所属・お役職はインタビュー当時のものです。

 

※2012年7月に上海光电医用电子仪器有限公司を存続会社として、上海光电医用电子仪器有限公司、美荻特光电医疗软件上海有限公司および尼虹光电贸易(上海)有限公司3社は合併されました。

 

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