舛添問題の問題

 

 

                                                            宋 文洲

私は地上波をあまり見ないのですが、たまに妻が見ているテレビ番組が聞こえて
きます。「舛添氏が公費でクレヨンしんちゃんを買った」との台詞を聞いた時、
思わず笑ってしまいました。

 

マスコミが頑張っても出てくる舛添氏の問題はせいぜい「公私混同」程度です。
「家族と泊まった旅館で公務をしたか」とか、「ヤフーオクションで買った画は
本当にプレゼントに使ったか」とか、聞いているうちに何だか笑えてしまうこと
が多いのです。

 

同じ東京都の問題として挙げられていた18億円もの使途不明金についてなぜ詳細を
追求しないのか。同じ自ら弁護士に依頼して調査をしているJOCの2億3千万円の
情報はなぜすっかり扱われなくなったのか。クレヨンしんちゃんの本は面白いかも
しれませんが、甘利氏の現金受取や秘書の高級車要求などの犯罪疑惑を取り上げる
意欲はまったくありません。

 

もし舛添氏のような問題をこれほど公共電波を使って取り上げる必要があるのだ
とすれば、他の政治家のこれよりもはるかに大きな問題に触れないのは
なぜでしょうか。

 

こんな自問をすること自体、幼稚だと分かっていても、ついついメルマガに
書いてしまう自分は暇だなと思うのですが、皆が同じことを言う時は大体
狂っている時だと考えるのが私の性です。

 

私は、中国の文化大革命を経験しました。普通の人々が既に財産を没収された
資産家や地主を虐めるのを楽しんでいるように見えました。民衆のストレスを
既に弱った「人民の敵」に発散させることによって毛沢東は大きな失敗を隠し、
人々の不満を逸らすことができました。

 

決して舛添氏のための弁護ではありません(まあそう聞こえても仕方がありま
せんが)。賄賂などの、罪に問われる問題があれば厳しく追及すべきですが、
法的に許される範囲の経費の使い方を追及しているうちにクレヨンしんちゃん
まで出てくるとは見苦しいものがあります。一体、どこの何の勢力がここまで
にして舛添氏に不満を持つのか、考えたくなります。

 

都知事とは米国大統領に近い直接選挙で一票一票の支持を受けてその地位に
着いた地方自治体のトップです。別荘で一部の仕事をこなし、それに公用車を
使うのは当然です。家族と泊まった旅館で仕事したって何にもおかしくないのです。
どこかのテレビは石原慎太郎氏の細かい経費の使い方を調べて文句を言ったのでしょうか。

 

トップの頭には常に仕事があり、緊急事態に常に備える必要があります。
シャワーを浴びても花に水をやっても急に考えが浮かんで急に電話をかけるのです。
緊急報告にも常に対応する義務があります。米国大統領は24時間核ボタンを
守る必要があるように、直接選挙で選ばれたトップは最初からその責務自身が
公私混同なのです。

 

都知事はマスコミの世話になった訳でもなく、マスコミの意向に沿って
辞任する必要はないのです。記者クラブ制度や公共電波独占などの特殊な
仕組みを以って言論の自由をコントロールしている日本のマスコミは長い目で
みると日本を良くしているとは思えません。

 

そもそもいつの時代でも権力と資本は言論をコントロールするものです。
体制や形式が違っても人類の本質はそう簡単に変わりません。マスコミのせいに
するよりも、一人一人が他人と異なる独自の思考を持つ心掛けが大切です。
私も間違っていることは多いのですが、宋メールは大勢と異なるところに
意義を見出したいと思います。



(終わり)