ご存知ですか?「良妻賢母」の語源

 

 

                                                            宋 文洲

「女の子は頭空っぽでバカでいい。」これは秋元康さんがアイドル達に作った
歌詞の一部です。秋元さんのことを人気アイドルグループAKB48の総合プロ
デューサーとして知らない方は少ないと思いますが、こんな時代遅れな歌詞を
少女達に歌わせて民衆に聞かせることで多くの方々の反発を招きました。

「女性を侮辱している」と批判している人もいれば、「炎上商法だ」と
冷ややかにみる方もいますが、別に法律に違反している訳ではないので私のような
暇人でなければこんなニュースに強い関心を示さないかもしれません。

実は私がこのニュースに関心を持ったのは単に暇だからではないのです。
「男性として女性に何を求めるか」あるいは「どんな女性が男性にとって
良い女性か」について、最近よく考えさせられたことがあったからです。

私の知人には「美人で仕事がよくできる上、学歴も経歴も素晴らしい」女性が
かなり多いのですが、不思議なことに彼女達はなかなか結婚相手が見付かり
ません。「条件が厳しく男を選んでいるから」とついつい考えてしまう方も
多いでしょう。正直、中にはそういう女性もいます。

しかし、彼女達の殆どはそうではありません。彼女達が悩んでいるのはむしろ
男達が彼女達を「遠慮」してしまうことです。「男性は女性より上でなければ
ならない」、「男性が女性を養うものだ」という固定概念が日本の男性を
彼女達から遠ざけるのです。

自分よりも「頭が賢く、視野が広く、能力が高い」妻はコンプレックスのもと
になり、夫婦生活が上手く行かないと男達が勝手に思い込んでいるようです。
それよりも頭が自分より悪くても能力が低くても「良妻賢母」になってくれた
ほうが自分と家族がより幸せになれると考えているようです。

実はこの「良妻賢母」こそ、大いなる誤解です。皆さんはご存じないと思いますが、
この「良妻賢母」のもとは中国にあり、語源は「賢妻良母」なのです。
なぜか日本では都合よく逆に変えられたのです。

中国では奥さんとは夫、子供、そして家族や親戚との関係を上手く処理し、
孟母三遷が示すように教育にも深い理解があり、旦那の良き理解者でありながら
耳に痛いアドバイスも上手くできる人のことです。このような役割は企業の
副社長や専務と同じであり、自分の価値観をしっかり持ちながらも矛盾や
トラブルを解決する賢い人でなればとても勤まりません。

妻の役割は夫に対するものであるのに対して母の役割は子供に対するものです。
子供にとっての理想的な母親像は優しさと愛情を示し、困った子供がいつでも
安心して戻れる「基地」になることです。これが良母の意味するところです。
一人二役ですが、順番が違います。賢妻になれてこそ良母になれるのです。

私の観察では成功している男性、長く仕事を頑張れる男性の奥さんは圧倒的に
賢い女性が多いのです。これは成功している企業家に賢いナンバー2がいる現象
に近いのです。「女性はバカでいい」とはまったくの勘違いと誤解であり、
人生経験の浅い男性を誤誘導してしまうのです。そもそも「女性は可愛ければ
いい」という言い方もロジック破綻しているのです。「可愛い」と「バカ」の
間は何の相関関係もありません。どちらかと言えば賢い女性には可愛い人が
多いのです。可愛く見えないならば、それは男性自身のコンプレックスと
勘違いが原因なのです。

以前、安倍首相は東南アジアの首脳達に「日本のエンターテイメント」として
AKB48を披露しましたが、首脳達の無表情は今も印象的です。安倍首相はまさか
ご親友の秋元康さんが主張される「輝く女性」像に賛同していないでしょうね。

 



(終わり)